先週は、Buxheimer Orgelbuch, Lochamer Liederbuchの講習会がHalleで行われた。
レベッカ・シュツワートの弟子、Martin Erhardtと、Milo MachoverによるCantus modaliswoche
今回で5回目だそうだ。私は今回2回目の参加で、ドイツの15世紀の音楽には
大変興味があったので,とても楽しみにしていた。
Buxheimer-Orgelbuchのオリジナル譜は、とても特殊で、TenorとContratenorが、アルファベットで
書かれている。Discantusの旋律は、Cーschluesselで書かれており、5線譜ならぬ、7線譜(!)で書かれている。音符の読み方も、少し特殊なので慣れるまでに時間がかかる。
トリルは、音符の下に向かって線が引かれていて、(4をさかさまに書いたような形)
トリルの入れ方も、主音を保音させたまま、ひとつ下の音を連打させる特殊な形。
#やbは、Discantusは、音符に下線があり、TenorとContratenorの場合、ff=fis, cf=cis
といった書き方がされている。
|
Buxheimer orgelbuch "Der Winter will hin weichen" |
また、私たちが今回メインとなったのは、Buxや、LochのTenorを基に、即興をする、といったことだ。簡単に説明をすると、Tenorに対して、Discantusは、6度のパラレル。
Contratenorは、Tenorに対して、3度、5度・・・(または5度3度。曲によって、どちらが和声に合うか試す)の繰り返し。
Discantusは、6度の進行を基に、メロディーを作曲する。
(この方法は、あらゆる時代の曲の即興にも使える)
D 666666
T
C 353535(または 535353)
即興にあたり、注意したいのは、16世紀のDiminutionと混合しやすいことで、それらの違いはBuxheimerには、3度の飛躍がみられることや、また、符点音符の使用も、よく見られる。
とにかく、buxheimerの曲に多く親しみ、その時代に没頭しなければ、即興は難しいと思った。
Contratenorが、3度の場合は、フォーブルドン、Fauxbourdon(偽りの低音)といって、
ブルゴーニュ楽派の作曲家たちによって中世後期から
ルネッサンス初期にかけて用いられた和声法。
Buxheimer orgelbuch(1460-1470年)
オリジナル譜と、編曲合わせて、256曲収められている。
作曲家の大半は、名無しだが、ジョン・ダイイスタブル、ギョーム・デュファイ、ジル・バンショワ、ウォルター・フライ、コンラート・パウマン。バウムガルトナーなどの曲が収められている。
オルガンで弾くケースが多いが、当時は、ポルタティーフや、リコーダ―で上声部を弾き、下声部はフィドルや、リュート、または、テノールを歌うこともできる。
そういった、アンサンブルとしての良さもあるが、ポルタティーフは、オルガンを超えた、
器楽ではなく、吹楽器としての、微妙な音のニュアンスは、音色といった魅力が伺える。
Lochamer Liederbuch
楽譜
http://imslp.org/wiki/Lochamer-Liederbuch_(Paumann,_Conrad)
Lochamer Liederbuchは、93ページにわたる、50曲ほどの3声でかかれた
コンラート・パウマンらによって作曲された曲である。
ここには、歌詞がかかれており、ドイツ語というよりも、オーストリア訛りといった感じの
言葉がそのままの形で残されている。Ein Vrouleen edel von naturenは、ドイツ語というよりは、
オランダ語訛りが強い。
それぞれ、世俗曲特有の、恋の歌は、ユーモラスなメロディーや歌詞のものも多く、
コメディーや、喜劇的なものが多い。
たとえば、"Mir ist mein pferd vernagellt gar"(Loch28, p.28)は
ある馬の話で、主人が馬のひづめを、間違えて取り付けた為、馬の脚は
悪くなる一方。主人は原因がわからなかったため、馬を新しい、雌馬と交換する。
そこで、その雌馬との恋が始まる・・・というようなお話。
その他にも"All mein gedencken dy ich hab"(Loch10 p、10)や、
"Der Wallt hat sich entlawbet"(Loch 16, p.16/17)は、男女の恋の駆け引きなどが
美しく綴られている。