2013年4月23日火曜日

ルネッサンスダンス

先週末、ドイツのハレでルネッサンスダンスの講習会に参加しました。
音楽のクラスと、ダンスのクラスに分かれ、1日だけだったが盛り沢山のプログラム!
朝10時に、続々と教会の施設に集まりそれぞれのコースに分かれ、練習します。


 私は今回は、音楽に専念し、ダンスは少しだけ踊りました。
主に、ルネッサンスのダンスといえば、パヴァ―ヌ、ガリヤルド、ジーグなど。
曲はすべて、即興演奏も試みるといった、豪華なバリエーションに富むものでした。



 中でも、面白かったのは、パントマイムの披露。
ちょっとした、短い劇は、見事でした。
内容は、ある貴婦人に、貧しい男性が恋をする話。なんとか彼女を振り向かせようと、
ダンスを勉強します。そして、一緒にデートをし、ハッピーエンド。

 ダンスの合間には、豪勢な食事が。
しかも、シェフによるルネッサンス様式のお食事。
教会には、オーブンがなかったため、ちょっとしたアクシデントもあったそうです。
でも、とってもおいしかった。ローズマリーなど、ハーブがたくさん料理には使われていました。

今回、この講習会で、思いがけない出会いがありました。
それは、食事の写真の真ん中に写っているおばあさん。

彼女は現在82歳のウルズラおばあさん。とってもパワフルなお方です。
その彼女は、実は、77歳のころからあるとっておきなことを始めたそうです。

それは・・・ こどものための、朗読会。
自分のお庭に、小さな小屋を幾つも建てて、小さな子どもたちを集めて、
お話しを聴かせる、といったものです。
もちろん、あかずきんちゃんの衣装や、白雪姫の衣装も、自分たちで作って。
この日の彼女のドレスも、手作りだそうです。

彼女曰く、「最近の子供たちは、コンピューターや、ゲーム、テレビなど、
あらゆる機械的なものに支配されて、想像力が乏しくなってきているのよ。
それだけじゃなくて、子供の両親たちも、子供たちと一緒にいる時間は短くなっているわ。
子供たちは、お金じゃない、親からの愛情が必要なのよ!」と、私に力説していました。

彼女は以前から、朗読だけではなく、ルネッサンスダンスや、ルネッサンス音楽も、
一緒に取り入れて、子供たちの感性を育てる努力をしてきました。
子供たちのための朗読者を育てるアカデミーまで設立するほどの頑張り。

私は、この日、私がこれからするべき何かが見えた気がしました。
子供たちのために、ウルズラさんのようなことが、これから自分でもできたらいいのに。
と、思いました。


2013年4月10日水曜日

ヨハネ受難曲とWolfgangさん

                                          wolfgangさん
                                                Aubazine(フランス)


                  泊ったホテル
                         
                        パリ公演のチラシ!


                       ノートルダム



ヨハネ受難曲の演奏会で、去年と今年、ブレーメン、フランスのAubazineとパリで演奏をした時の指揮者のWolfgang Helbichさんが70歳の年で亡くなった。 
彼はberlinの指揮者、ブレーメンのDomchorの指揮者、そして、Rathschorの指揮者として、長年にわたり勤めてきた有名な方だった。 
http://de.wikipedia.org/wiki/Wolfgang_Helbich_(Kirchenmusiker) 

4月8日は、ちょうど彼の誕生日だった。 
あまりにも、急なことだったので、言葉にならないほど驚いた。 
きっと何人もの人が彼の死を悲しんだことだろう。 

つい先月、私は、Wolfgangさんの指揮でバッハのヨハネ受難曲を弾いたばかりだった。 
彼は、特にバッハをこよなく愛していて、本番中、コラールでは涙を流していた。 
適切で細やかな指導は、これまで受難曲を弾いた中でも一番素晴らしく、 
今年も一緒に演奏ができることが、とても楽しみだった。 

ヨハネ受難曲には、ガンバとアルトの” Es ist vollbracht ”成し遂げられた のアリアがある。 

Nr.30 Arie - Alt 第 30 曲 アリア (アルト) 
Es ist vollbracht ! 成し遂げられた! 
O Trost vor die gekrankten Seelen ! 病める魂に慰めあれ! 
Die Trauernacht 悲しみの夜は、 
Last nun die letzten Stunde zählen. まもなく終わろうとしている。 
Der Held aus Juda siegt mit Macht ユダの国より出た勇士は堂々たる勝利を治め、 
Und schliest den Kampf. 戦いを終えられた。 
Es ist vollbracht ! 成し遂げられた! 

この曲は、何度弾いても、なかなか気持ちが込められずにいて、 
難しい曲だった。でも、今回、彼の指導を受けて、自分なりに初めてうまく弾けたと思った。 

彼は最後、私に 「君は本当に素晴らしいガンバ弾きだ。演奏も的確で、ヒレパールも、 
さぞ、君を誇りに思うだろう。」とおっしゃった。 

そして、彼は何よりも、「沈黙」を大事にしていた。 
音と音の間にも、とても気を遣っているのがわかった。 
沈黙ほど、語るものは無い。ということも、教えてくれた。 

特に、ヨハネ受難曲の最後のコラールは、私にとってこれから忘れられない曲となるだろう。 
なぜなら、彼が、何度も演奏会中に涙を流していたから。 
きっと彼は天に召され、安らかに眠ることだろう。 

Nr.39 Chor 第 39 曲 合唱 
Ruht wohl, ihr heiligen Gebeine, 安らかに眠ってください、聖なる骸よ、 
Die ich nun weiter nicht beweine, わたしはもはや、嘆き悲しむことをいたしません。 
Ruht wohl und bringt auch mich zur Ruh! 安らかに眠り、わたしをも安息に導いて下さい! 
Das Grab, so euch bestimmet ist あなたのために定められこのお墓は、 
Und ferner keine Not umschließt, もはやいかなる苦しみにも襲われることはありません。 
Macht mir den Himmel auf それは天国の扉を開き 
und schließt die Hölle zu. 地獄への道を閉ざすのです。 

2013年4月6日土曜日

無題


私の周りでは、ものすごいことが起きている。
竜巻か台風のようなもので、風が大きく流れてくる。
自分でもよくわからないけれど、今まで自分が理想化してきたことが、
今まさに目の前で現実のものになろうとしている。

それは、音楽という枠を超えて、むしろ愛という形となって大きな変容を遂げようとしている。
でも、それは完全な姿というわけではなく、天界の音楽の前味に過ぎないのであろう。
しかも、このものすごいことは、すでに前から起き始めている。

音楽というひとつの象徴は、深い内側から眠りを覚まし、
もはやそのヴァイブレーションは、調和として宇宙と語るだろう。
しかし、私はただ、それを、この手につかみ取ろうとしてきた。
それは、向こうの方から、私を包み込み、やってくるものだったのだ。
愚かにも、人間はその至福にありながら、それを聴こうともしてこなかった。
ただ、私たちは歩みを止めてはならない。
いつも主を見上げて、へりくだっていなければ。


美の根源はどこから来るのか。
星の光のように、死と生の狭間を生きて
何も語らぬ石に耳を澄ますと聴こえる川のせせらぎの様に
風にただ漂う木の葉と身を任せる鳥の羽
ただ何事も無かったかのようにして息を潜め
鼓動のごとくすべては動いているのだ
声にならない悲痛な叫びも苛立ちも
混沌に飲み込まれるのを待つ
すべてがひとつになる瞬間を
静寂は語り始める